ロシア語の学習において、最も重要であり、同時に学習者がつまずきやすいポイントのひとつが**動詞の変化(活用)です。日本語や英語のように「時制」や「人称」によって形が変わるだけでなく、ロシア語では動詞に相(アスペクト)**の考え方が加わり、表現の幅を大きく広げています。本記事では、ロシア語動詞の変化を段階的に整理して紹介します。
1. 人称変化(現在形・未来形)
ロシア語の動詞は、主語の人称や数に応じて語尾が変わります。基本的に**6つの人称(1人称単数・複数、2人称単数・複数、3人称単数・複数)**があります。
例:говорить(話す)
- Я говорю ― 私は話す
- Ты говоришь ― 君は話す
- Он/Она говорит ― 彼/彼女は話す
- Мы говорим ― 私たちは話す
- Вы говорите ― あなた(たち)は話す
- Они говорят ― 彼らは話す
語尾のパターンには第1変化と第2変化があり、動詞ごとにどちらに属するかを覚える必要があります。
2. 過去形の変化
過去形は比較的シンプルで、動詞の語幹に性・数に応じた語尾をつけます。
例:говорить(話す)
- Он говорил ― 彼は話した
- Она говорила ― 彼女は話した
- Оно говорило ― それは話した
- Они говорили ― 彼らは話した
男性・女性・中性・複数で語尾が異なる点が特徴です。
3. 未来形の表し方
ロシア語では未来形が2種類あります。
- 完了体動詞を使う(1語で未来を表す)
- Я скажу. ― 私は言うだろう。
- 不完了体動詞 + быть の未来形を使う
- Я буду говорить. ― 私は話すだろう。
この「完了体」と「不完了体」の区別はロシア語の最大の特徴であり、単なる時制以上に重要です。
4. 動詞の相(アスペクト)
ロシア語の動詞は、必ず不完了体と完了体のペアで存在します。
- 不完了体(говорить):行為の継続、習慣、反復を表す
- 完了体(сказать):行為の完了、一度きりの出来事を表す
たとえば「私はよく本を読む」と言いたいときは不完了体、
「私はその本を読み終えた」と言いたいときは完了体を使います。
5. 命令形
命令文を作るときも、動詞の語尾が変化します。
例:читать(読む)
- Читай! ― 読め!(不完了体)
- Прочитай! ― 読み終えろ!(完了体)
相の違いによって命令のニュアンスも変わるのが面白いところです。
まとめ
ロシア語の動詞変化は、
- 人称による現在形・未来形の変化
- 性と数による過去形の変化
- 相(完了体/不完了体)の使い分け
- 命令形の活用
といった要素が複雑に絡み合っています。
最初は覚えることが多く大変に思えますが、基本パターンを押さえて慣れていけば、相のニュアンスを使い分けながら豊かな表現ができるようになります。
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