ロシア語独学⑨:運動の動詞

ロシア語の学習で避けて通れないのが 運動の動詞(глаголы движения) です。日本語や英語の「行く」「来る」に比べて種類が多く、方向性や手段によって細かく区別されます。ここでは体系的に整理し、学習の助けとなる一覧表を示します。


1. 運動の動詞の二つのタイプ

ロシア語の運動動詞には 一方向性(однонаправленные) と 無方向性(многонаправленные) の対立があります。

  • 一方向性 … 「今、ある特定の方向へ進んでいる」
  • 無方向性 … 「あちこち行く」「繰り返す」「習慣」

例:

  • идти(徒歩・一方向) ↔ ходить(徒歩・無方向)
  • ехать(乗り物・一方向) ↔ ездить(乗り物・無方向)

2. 移動手段ごとの主要動詞一覧

手段無方向性(習慣・往復)一方向性(現在進行・一度の移動)
徒歩ходитьидти
乗り物ездитьехать
飛行летатьлететь
水上плаватьплыть
走るбегатьбежать
這うползатьползти
登るлазитьлезть
運ぶноситьнести
乗せる(運転)возитьвезти
追うгонятьгнать

3. 用法の対照表

例文意味解説
Я иду в школу.私はいま学校へ歩いて行っている。идти(徒歩・一方向、進行中)
Я хожу в школу каждый день.私は毎日学校へ通っている。ходить(徒歩・無方向、習慣)
Он едет в Москву.彼はモスクワへ向かっている(乗り物)。ехать(一方向)
Он часто ездит в Москву.彼はよくモスクワへ行く。ездить(無方向、習慣)
Самолёт летит в Токио.飛行機が東京に向かっている。лететь(一方向)
Птицы летают над морем.鳥たちが海の上を飛んでいる。летать(無方向、繰り返し)

4. 完了体との関係

運動の動詞は基本的に不完了体ですが、目的地到達を表すときには完了体が用いられます。

  • прийти(徒歩で到着する)
  • поехать(乗り物で出発する)
  • прилететь(飛行機で到着する)

👉 不完了体:動作の過程(「行っている」「通っている」)
👉 完了体:動作の結果(「到着した」「出発した」)


5. 学習のポイント

  1. идти / ходить、ехать / ездить の4つをマスターする。
  2. 次に лететь / летать、плыть / плавать を覚える。
  3. 習慣と一回限りの移動を意識して文を作る。
  4. 完了体を合わせて使い分けられるようにする。

まとめ

ロシア語の運動の動詞は、「方向」「習慣性」「移動手段」という3つの要素で意味が変わります。最初は複雑に感じますが、一覧表と対照表を参考に練習すると理解が深まります。マスターすれば、ロシア語での表現力が格段に広がります。