ロシア語独学⑧:代名詞の格変化

ロシア語における代名詞は、名詞と同様に 格変化 します。ただし、代名詞は一般的な名詞とは異なる独自の変化形を持つものが多いため、学習者にとって特に覚えにくい部分です。本記事では、ロシア語の 人称代名詞・再帰代名詞・疑問代名詞 の格変化を整理します。


1. 人称代名詞の格変化

ロシア語の人称代名詞は以下の通りです。
(例:я「私」、ты「君」、он「彼」、она「彼女」、мы「私たち」、вы「あなた(たち)」、они「彼ら/彼女ら」)

人称主格属格与格対格造格前置格
1単яменямнеменямнойобо мне
2単тытебятебетебятобойо тебе
3単(男)онего (него)ему (нему)его (него)им (ним)о нём
3単(女)онаеё (неё)ей (ней)её (неё)ею (нею)о ней
3単(中)оноего (него)ему (нему)его (него)им (ним)о нём
1複мынаснамнаснамио нас
2複вывасвамвасвамио вас
3複ониих (них)им (ним)их (них)ими (ними)о них

※ 括弧内は前置詞の後で使われる形。


2. 再帰代名詞の格変化

ロシア語には「自分自身」を表す再帰代名詞 себя があります。主格は存在せず、以下の形を取ります。

属格себя
与格себе
対格себя
造格собой / собою
前置格о себе

3. 疑問代名詞の格変化

疑問代名詞には кто(誰) と что(何) があります。これらも格変化します。

(1) кто(誰)

主格кто
属格кого
与格кому
対格кого
造格кем
前置格о ком

(2) что(何)

主格что
属格чего
与格чему
対格что
造格чем
前置格о чём

まとめ

ロシア語の代名詞は、名詞とは異なる不規則な格変化を持ちます。特に 人称代名詞の短縮形・前置詞後の特殊形、再帰代名詞 себя に主格が存在しない点、そして疑問代名詞 кто / что の変化は重要なポイントです。

ロシア語独学⑦:格の用法

ロシア語は屈折語であり、名詞・代名詞・形容詞は文中での役割によって形を変えます。これを「格変化」と呼びます。ロシア語には6つの格があり、それぞれ独自の用法があります。ここでは各格の基本的な働きと代表的な使い方、さらに名詞の格変化表(単数・複数)、不規則変化、前置詞の格支配を整理します。


1. 主格(именительный падеж)

  • 基本の働き: 主語を表す。「誰が」「何が」
  • 質問に答える: кто? что?
  • 例文:
    • Студент читает книгу.(学生が本を読んでいる)

2. 属格(родительный падеж)

  • 基本の働き: 所有・数量・否定。「〜の」「〜から」「〜の一部」
  • 質問に答える: кого? чего?
  • 例文:
    • У меня нет книги.(私は本を持っていない)
    • Чашка чая.(お茶のカップ)

3. 与格(дательный падеж)

  • 基本の働き: 間接目的語。「〜に」「〜へ」
  • 質問に答える: кому? чему?
  • 例文:
    • Я дал другу книгу.(私は友達に本を渡した)
    • Мне холодно.(私は寒い → 直訳: 私に寒い)

4. 対格(винительный падеж)

  • 基本の働き: 直接目的語。「何を」「誰を」
  • 質問に答える: кого? что?
  • 例文:
    • Я читаю книгу.(私は本を読んでいる)

※生物(人・動物)の場合は属格と同じ形になることが多い。


5. 造格(творительный падеж)

  • 基本の働き: 手段・道具・共同者。「〜で」「〜と一緒に」
  • 質問に答える: кем? чем?
  • 例文:
    • Я пишу ручкой.(私はペンで書く)
    • Я был с другом.(私は友達と一緒にいた)

職業や身分を表す補語にも使う。

  • Он работает врачом.(彼は医者として働いている)

6. 前置格(предложный падеж)

  • 基本の働き: 前置詞(в, на, о など)とともに。「〜で」「〜について」
  • 質問に答える: о ком? о чём? где?
  • 例文:
    • Я живу в Москве.(私はモスクワに住んでいる)
    • Мы говорим о книге.(私たちは本について話す)

名詞の格変化表

単数形

男性名詞 стол(机)女性名詞 книга(本)中性名詞 море(海)
主格столкнигаморе
属格столакнигиморя
与格столукнигеморю
対格столкнигуморе
造格столомкнигойморем
前置格столекнигеморе

複数形

男性名詞 стол(机)女性名詞 книга(本)中性名詞 море(海)
主格столыкнигиморя
属格столовкнигморей
与格столамкнигамморям
対格столыкнигиморя
造格столамикнигамиморями
前置格столахкнигахморях

不規則な名詞の変化(例)

一部の名詞は規則に当てはまらず、特別な変化をします。

名詞意味主格単数属格単数主格複数属格複数
друг友達другдругадрузьядрузей
дочьдочьдочеридочеридочерей
человекчеловекчеловекалюдилюдей
ребёнок子供ребёнокребёнкадетидетей

前置詞と格の対応(格支配)

ロシア語では前置詞ごとに使う格が決まっています。代表的なものをまとめます。

属格をとる前置詞

  • без(〜なしで)
  • для(〜のために)
  • от(〜から)
  • из(〜から、出発点)
  • у(〜のところに)
  • после(〜の後で)

例: без книги(本なしで), у друга(友達のところで)


与格をとる前置詞

  • к(〜の方へ)
  • по(〜に沿って、〜によって)

例: к столу(机の方へ), по плану(計画に従って)


対格をとる前置詞

  • в(〜へ)
  • на(〜へ、〜に)
  • через(〜を通って)

例: в Москву(モスクワへ), на работу(仕事へ)


造格をとる前置詞

  • с(〜と一緒に)
  • над(〜の上に)
  • под(〜の下に)
  • между(〜の間に)

例: с другом(友達と一緒に), под столом(机の下に)


前置格をとる前置詞

  • в(〜で)
  • на(〜で、〜において)
  • о(об)(〜について)
  • при(〜のもとで)

例: в Москве(モスクワで), о книге(本について)


まとめ

ロシア語の格は次のように整理できます:

主な役割質問語例文
主格主語кто? что?Студент читает.
属格所有・数量・否定кого? чего?У меня нет книги.
与格間接目的語кому? чему?Я дал другу книгу.
対格直接目的語кого? что?Я читаю книгу.
造格手段・道具・一緒にкем? чем?Я пишу ручкой.
前置格前置詞と共にо ком? о чём? где?Я живу в Москве.

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ロシア語独学⑥:名詞の格変化 ― 男性・中性・女性名詞ごとの基本

ロシア語の名詞は、**性(男性・女性・中性)と格(6種類)**によって形が変化します。格変化は文法の中核であり、主語・目的語・所有などを表すために欠かせません。ここでは、性別ごとに代表的な語を例に、格変化を一覧表で示します。


1. 男性名詞の格変化

男性名詞は、語尾が子音で終わるもの(硬変化)、-й、-ьで終わるもの(軟変化)があります。

例:стол(机、硬変化)

用法
主格(主語)誰が/何がстол
属格(所有・否定)誰の/何のстола
与格(間接目的語)誰にстолу
対格(直接目的語)誰を/何をстол
造格(手段・方法)誰で/何でстолом
前置格(場所・話題)誰について/何について(о) столе

例:учитель(先生、軟変化)

主格учитель
属格учителя
与格учителю
対格учителя
造格учителем
前置格(об) учителе

2. 中性名詞の格変化

中性名詞は語尾が -о、-е、-мя で終わります。変化は比較的単純です。

例:окно(窓)

主格окно
属格окна
与格окну
対格окно
造格окном
前置格(об) окне

例:море(海)

主格море
属格моря
与格морю
対格море
造格морем
前置格(о) море

3. 女性名詞の格変化

女性名詞は -а、-я、-ь で終わります。語尾の種類によって細かく変わります。

例:книга(本、-аで終わる)

主格книга
属格книги
与格книге
対格книгу
造格книгой / книгою
前置格(о) книге

例:дочь(娘、-ьで終わる)

主格дочь
属格дочери
与格дочери
対格дочь
造格дочерью
前置格(о) дочери

まとめ

  • 男性名詞:子音・-й・-ьで終わる。硬変化と軟変化に分かれる。
  • 中性名詞:-о、-е、-мяで終わる。規則的で覚えやすい。
  • 女性名詞:-а、-я、-ьで終わる。語尾によって変化が異なる。

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ロシア語独学⑤:動詞の変化

ロシア語の学習において、最も重要であり、同時に学習者がつまずきやすいポイントのひとつが**動詞の変化(活用)です。日本語や英語のように「時制」や「人称」によって形が変わるだけでなく、ロシア語では動詞に相(アスペクト)**の考え方が加わり、表現の幅を大きく広げています。本記事では、ロシア語動詞の変化を段階的に整理して紹介します。


1. 人称変化(現在形・未来形)

ロシア語の動詞は、主語の人称や数に応じて語尾が変わります。基本的に**6つの人称(1人称単数・複数、2人称単数・複数、3人称単数・複数)**があります。

例:говорить(話す)

  • Я говорю ― 私は話す
  • Ты говоришь ― 君は話す
  • Он/Она говорит ― 彼/彼女は話す
  • Мы говорим ― 私たちは話す
  • Вы говорите ― あなた(たち)は話す
  • Они говорят ― 彼らは話す

語尾のパターンには第1変化と第2変化があり、動詞ごとにどちらに属するかを覚える必要があります。


2. 過去形の変化

過去形は比較的シンプルで、動詞の語幹に性・数に応じた語尾をつけます。

例:говорить(話す)

  • Он говорил ― 彼は話した
  • Она говорила ― 彼女は話した
  • Оно говорило ― それは話した
  • Они говорили ― 彼らは話した

男性・女性・中性・複数で語尾が異なる点が特徴です。


3. 未来形の表し方

ロシア語では未来形が2種類あります。

  1. 完了体動詞を使う(1語で未来を表す)
    • Я скажу. ― 私は言うだろう。
  2. 不完了体動詞 + быть の未来形を使う
    • Я буду говорить. ― 私は話すだろう。

この「完了体」と「不完了体」の区別はロシア語の最大の特徴であり、単なる時制以上に重要です。


4. 動詞の相(アスペクト)

ロシア語の動詞は、必ず不完了体完了体のペアで存在します。

  • 不完了体(говорить):行為の継続、習慣、反復を表す
  • 完了体(сказать):行為の完了、一度きりの出来事を表す

たとえば「私はよく本を読む」と言いたいときは不完了体、
「私はその本を読み終えた」と言いたいときは完了体を使います。


5. 命令形

命令文を作るときも、動詞の語尾が変化します。

例:читать(読む)

  • Читай! ― 読め!(不完了体)
  • Прочитай! ― 読み終えろ!(完了体)

相の違いによって命令のニュアンスも変わるのが面白いところです。


まとめ

ロシア語の動詞変化は、

  1. 人称による現在形・未来形の変化
  2. 性と数による過去形の変化
  3. 相(完了体/不完了体)の使い分け
  4. 命令形の活用
    といった要素が複雑に絡み合っています。

最初は覚えることが多く大変に思えますが、基本パターンを押さえて慣れていけば、相のニュアンスを使い分けながら豊かな表現ができるようになります。

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ロシア語独学④:名詞を修飾する品詞(主格限定)

ロシア語では名詞を修飾する語が多く存在します。ここでは主格形に限定して、所有代名詞・疑問所有代名詞・指示代名詞・定代名詞・形容詞に分けて整理します。いずれも修飾する名詞と同じ性・数・格に一致するのが基本ルールです。


1. 所有代名詞(Притяжательные местоимения)

所有を表す代名詞。名詞の性・数に一致。

  • мой, моя, моё, мои (私の)
  • твой, твоя, твоё, твои (君の)
  • наш, наша, наше, наши (私たちの)
  • ваш, ваша, ваше, ваши (あなたの/あなたたちの)
  • его, её, их (彼の、彼女の、彼らの) → 不変化

例:мой друг(私の友人)、моя книга(私の本)、наши дети(私たちの子供たち)


2. 疑問所有代名詞(Вопросительные притяжательные местоимения)

「誰の?」を表す。

  • чей, чья, чьё, чьи

例:Чей это дом?(これは誰の家ですか?)


3. 指示代名詞(Указательные местоимения)

対象を指し示す。

  • этот, эта, это, эти (この〜)
  • тот, та, то, те (あの〜)

例:эта женщина(この女性)、те книги(あの本たち)


4. 定代名詞(Определительные местоимения)

名詞を限定・強調する。

  • весь, вся, всё, все (全ての)
  • сам, сама, само, сами (〜自身)
  • самый, самая, самое, самые (最も〜)

例:весь мир(全世界)、сам человек(本人)、самая красивая девушка(最も美しい少女)


5. 形容詞(Прилагательные)

5-1. 長語尾と短語尾

ロシア語の形容詞には大きく分けて 長語尾形 と 短語尾形 があります。

  • 長語尾(полные формы)
    • 名詞を直接修飾する標準的な形。
    • 性・数・格に一致。
    • 例:новый дом(新しい家)、красивая девушка(美しい少女)
  • 短語尾(краткие формы)
    • 主語の状態を述語として表すときに使う。
    • 通常は述語用に限定され、修飾語としては使わない。
    • 例:дом новый(家は新しい)、девушка красива(少女は美しい)

5-2. 硬変化と軟変化

形容詞の長語尾形には、硬変化型 と 軟変化型 がある。語幹の末尾が硬子音か軟子音かによって決まる。

硬変化(твёрдое склонение)

  • 語幹が硬子音で終わる形容詞。
  • 主格語尾:
    • 男性:-ый / -ой
    • 女性:-ая
    • 中性:-ое
    • 複数:-ые

例:

  • новый дом(新しい家)
  • красивая девушка(美しい少女)
  • доброе слово(優しい言葉)
  • новые книги(新しい本たち)

軟変化(мягкое склонение)

  • 語幹が軟子音または й で終わる形容詞。
  • 主格語尾:
    • 男性:-ий
    • 女性:-яя
    • 中性:-ее
    • 複数:-ие

例:

  • синий карандаш(青い鉛筆)
  • синяя рубашка(青いシャツ)
  • синее море(青い海)
  • синие дома(青い家々)

まとめ

  • 所有代名詞:мой, твой, наш, ваш, его, её, их
  • 疑問所有代名詞:чей, чья, чьё, чьи
  • 指示代名詞:этот, тот
  • 定代名詞:весь, сам, самый
  • 形容詞
    • 長語尾形(名詞を修飾)と 短語尾形(述語として使用)
    • 硬変化型(-ый, -ая, -ое, -ые)と 軟変化型(-ий, -яя, -ее, -ие)

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ロシア語独学③:名詞複数形と人称代名詞(主格)

ロシア語は名詞や代名詞が文の役割に応じて形を変化させます。ここではまず、名詞の複数形(主格)と、人称代名詞の主格形について整理してみましょう。


1. 名詞の複数形(主格)

ロシア語では、名詞の性(男性・女性・中性)や語尾によって複数形の作り方が変わります。

(1) 男性名詞

多くの男性名詞は子音 + ы / иで複数形になります。

  • стол(机)→ столы
  • брат(兄弟)→ братья(不規則変化)

子音の直前が「к, г, х, ж, ч, ш, щ」の場合はыの代わりにиを用います。

  • друг(友達)→ друзья(不規則変化)
  • врач(医者)→ врачи

(2) 女性名詞

  • 語尾が  の場合 → -ы / -и に変化
    • книга(本)→ книги
    • лампа(ランプ)→ лампы
  • 語尾が  の場合 → 
    • неделя(週)→ недели

(3) 中性名詞

  • 語尾が  → 
    • окно(窓)→ окна
  • 語尾が  → 
    • море(海)→ моря

(4) 特殊変化

いくつかの単語は不規則に変化します。

  • человек(人間)→ люди(人々)
  • ребёнок(子供)→ дети(子供たち)

2. 人称代名詞(主格形)

ロシア語の人称代名詞は英語の I, you, he, she… にあたるものです。主格では次のように変化します。

人称単数複数
1人称я(私)мы(私たち)
2人称ты(君・親しい相手)вы(あなたがた / あなた〔敬称〕)
3人称он(彼)они(彼ら / 彼女たち / それら)
она(彼女)
оно(それ・中性)

補足

  • ты と вы の使い分けは重要です。тыは親しい相手に対して、выは複数形と同時に敬語としても使われます。
  • ониは人間に限らず、物や動物の複数にも使えます。

まとめ

  • 名詞の複数形は語尾によって規則的に変化しますが、不規則な単語もあるので注意が必要です。
  • 人称代名詞は英語と同じように主語としてよく使われますが、ロシア語では動詞の活用が主語を示すので、省略されることも多いです。

👉 名詞の複数形を覚えると、文章をより自然に組み立てられるようになり、代名詞を使いこなせば会話がぐっとスムーズになります。

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ロシア語独学②:文法カテゴリー

ロシア語を学ぶときに避けて通れないのが 数・性・格 という文法カテゴリーです。これらは単語の形を大きく左右し、正しい表現を作るための土台となります。ここではそれぞれを分かりやすく整理してみましょう。


1. 数(単数と複数)

ロシア語には 単数(единственное число) と 複数(множественное число) の区別があります。

  • 単数 … ひとつのものを表す(例:стол = 机)
  • 複数 … 複数のものを表す(例:столы = 机たち)

特徴的なのは、名詞だけでなく、形容詞や動詞も数によって形を変えるという点です。

  • 名詞:студент → студенты
  • 形容詞:новый стол → новые столы
  • 動詞(過去形):он писал → они писали

このように、文中の語が数に合わせて変化することで、文全体の統一感が保たれます。


2. 性(男性・女性・中性)

ロシア語の名詞には必ず 文法的性(род) があり、主に 男性・女性・中性 の3種類に分かれます。

  • 男性(мужской род):多くは語尾が子音で終わる(例:стол, друг)
  • 女性(женский род):語尾が -а / -я で終わる(例:книга, неделя)
  • 中性(средний род):語尾が -о / -е で終わる(例:окно, море)

また、形容詞や過去形の動詞も、この性に合わせて変化します。

  • Новый стол (新しい机, 男性)
  • Новая книга (新しい本, 女性)
  • Новое окно (新しい窓, 中性)

性は意味上の性別と必ずしも一致せず、文法的に決まっていることが多いので、名詞と一緒に性を覚えることが大切です。


3. 格(主格・対格・生格など)

ロシア語文法の最大の特徴といえば、格(падеж) です。
名詞・形容詞・代名詞などは、文中での役割によって形を変えます。

ロシア語には 6つの格 があります。

  1. 主格(именительный падеж) – 主語を表す
     例:Это книга.(これは本です)
  2. 生格(родительный падеж) – 所有や否定を表す
     例:Нет книги.(本がない)
  3. 与格(дательный падеж) – 受け手を表す
     例:Я дал книгу другу.(私は友達に本を渡した)
  4. 対格(винительный падеж) – 直接目的語を表す
     例:Я читаю книгу.(私は本を読んでいる)
  5. 造格(творительный падеж) – 手段・道具を表す
     例:Я пишу ручкой.(私はペンで書く)
  6. 前置格(предложный падеж) – 前置詞とともに場所や話題を表す
     例:Я думаю о книге.(私は本について考えている)

このように格変化によって文の意味が正確に伝わるため、語順の自由度が高いという特徴があります。


まとめ

  • :単数と複数があり、名詞だけでなく形容詞や動詞も変化する
  • :男性・女性・中性の3つがあり、名詞と一緒に覚えることが大切
  • :6種類あり、名詞や形容詞の語尾が変化して文中での役割を示す

ロシア語学習においてこれらの文法カテゴリーを理解することは、正確な文を組み立てる第一歩です。最初は複雑に見えても、慣れてくると「パズルのように組み合わせて意味を作る」楽しさが見えてきます。

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ロシア語独学①:キリル文字を順番に覚えよう

ロシア語のアルファベットは キリル文字と呼ばれ、全部で33文字あります。
ここではアルファベット順に紹介しながら、読み方や覚え方のコツを解説します。


キリル文字一覧(名称)

А а – 「アー」
Б б – 「ベー」
В в – 「ヴェー」
Г г – 「ゲー」
Д д – 「デー」
Е е – 「ィエー」
Ё ё – 「ヨー」
Ж ж – 「ジェー」
З з – 「ゼー」
И и – 「イー」
Й й – 「イークラトゥカェ」
К к – 「カー」
Л л – 「エル」
М м – 「エム」
Н н – 「エヌ」
О о – 「オー」
П п – 「ペー」
Р р – 「エル」
С с – 「エス」
Т т – 「テー」
У у – 「ウー」
Ф ф – 「エフ」
Х х – 「ハー」
Ц ц – 「ツェー」
Ч ч – 「チェー」
Ш ш – 「シャー」
Щ щ – 「シシャー」
Ъ ъ – 「トゥヴョルドゥイ・ズナーク」
Ы ы – 「ゥイ」
Ь ь – 「ミャーフキィー・ズナーク」
Э э – 「エー」
Ю ю – 「ユー」
Я я – 「ヤー」


文字ごとの解説

А а
  • 発音:日本語の「ア」と同じ
  • 例:мама (ママ) = お母さん
Б б
  • 発音:「バ」の子音
  • 英語の B に近い
  • 例:брат (ブラート) = 兄
В в
  • 発音:「ヴ」
  • 英語の V に近い
  • 例:вино (ヴィノ) = ワイン
Г г
  • 発音:「ガ」の子音
  • 英語の G
  • 例:год (ゴート) = 年
Д д
  • 発音:「ダ」の子音
  • 英語の D
  • 例:дом (ドーム) = 家
Е е
  • 発音:「ィエ」
  • 語頭では「ィエ」、それ以外は「エ」っぽくなることも
  • 例:еда (ィエダー) = 食べ物
Ё ё
  • 発音:「ィオ」をすばやく
  • 辞書では省略されることが多い
  • 例:ёлка (ヨールカ) = もみの木
Ж ж
  • 発音:「ジ」
  • 英語にはない音で「フランス語のj」に近い
  • 例:жизнь (ジーズニ) = 人生
З з
  • 発音:「ザ」の子音
  • 英語の Z
  • 例:зима (ズィマー) = 冬
И и
  • 発音:「イ」
  • 英語の ee
  • 例:мир (ミール) = 世界/平和
Й й
  • 発音:短い「イ」、英語の y に近い
  • 例:мой (モーイ) = 私の
К к
  • 発音:「カ」の子音
  • 英語の K
  • 例:кот (コート) = 猫
Л л
  • 発音:「ル」
  • 舌を歯の裏につけるL音
  • 例:луна (ルナー) = 月
М м
  • 発音:「マ」の子音
  • 英語の M
  • 例:мама (ママ) = お母さん
Н н
  • 発音:「ナ」の子音
  • 英語の N
  • 例:ночь (ノーチ) = 夜
О о
  • 発音:「オ」
  • 強勢(アクセント)があると「オ」、弱いと「ア」に近づく
  • 例:молоко (マラコー) = 牛乳
П п
  • 発音:「パ」の子音
  • 英語の P
  • 例:папа (パパ) = お父さん
Р р
  • 発音:「ル(巻き舌)」
  • イタリア語やスペイン語のRに似ている
  • 例:река (リカー) = 川
С с
  • 発音:「サ」の子音
  • 英語の S
  • 例:соль (ソーリ) = 塩
Т т
  • 発音:「タ」の子音
  • 英語の T
  • 例:тут (トゥート) = ここ
У у
  • 発音:「ウ」
  • 英語の oo
  • 例:ум (ウーム) = 知恵
Ф ф
  • 発音:「フ」
  • 英語の F
  • 例:фон (フォン) = 背景
Х х
  • 発音:「ハ」より強く、喉の奥で出す音(ドイツ語のBachのch)
  • 例:хлеб (フリェープ) = パン
Ц ц
  • 発音:「ツ」の子音
  • 例:царь (ツァーリ) = 皇帝
Ч ч
  • 発音:「チ」の子音
  • 例:чай (チャイ) = お茶
Ш ш
  • 発音:「シ」の子音
  • 舌を後ろに引いて発音
  • 例:школа (シコーラ) = 学校
Щ щ
  • 発音:「シィ」
  • 例:щи (シィー) = キャベツスープ
Ъ ъ(硬音記号)
  • 発音しない。直前の子音を強くして次の母音をはっきり読む。
  • 例:подъезд (パドイェースト) = 入口
Ы ы
  • 発音:「ウ」と「イ」の中間音
  • 例:сырый (スィルィー) = 生の
Ь ь(軟音記号)
  • 発音しない。直前の子音をやわらかくする。
  • 例:мать (マーチ) = 母
Э э
  • 発音:「エ」
  • 例:это (エータ) = これは
Ю ю
  • 発音:「ユ」
  • 例:Юрий (ユーリー) = ユーリー
Я я
  • 発音:「ヤ」
  • 例:я (ヤ) = 私

まとめ

  • ロシア語のアルファベットは 33文字
  • 形が似ているけど発音が違う文字に注意(例:Н=「ン」、Р=「ル」)
  • 記号(Ъ Ь)は発音しないが、読み方を変える重要な役割を持つ

まずは毎日5文字ずつ書いて声に出す練習から始めれば、1週間で全部マスターできます!

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