ロシア語独学③:名詞複数形と人称代名詞(主格)

ロシア語は名詞や代名詞が文の役割に応じて形を変化させます。ここではまず、名詞の複数形(主格)と、人称代名詞の主格形について整理してみましょう。


1. 名詞の複数形(主格)

ロシア語では、名詞の性(男性・女性・中性)や語尾によって複数形の作り方が変わります。

(1) 男性名詞

多くの男性名詞は子音 + ы / иで複数形になります。

  • стол(机)→ столы
  • брат(兄弟)→ братья(不規則変化)

子音の直前が「к, г, х, ж, ч, ш, щ」の場合はыの代わりにиを用います。

  • друг(友達)→ друзья(不規則変化)
  • врач(医者)→ врачи

(2) 女性名詞

  • 語尾が  の場合 → -ы / -и に変化
    • книга(本)→ книги
    • лампа(ランプ)→ лампы
  • 語尾が  の場合 → 
    • неделя(週)→ недели

(3) 中性名詞

  • 語尾が  → 
    • окно(窓)→ окна
  • 語尾が  → 
    • море(海)→ моря

(4) 特殊変化

いくつかの単語は不規則に変化します。

  • человек(人間)→ люди(人々)
  • ребёнок(子供)→ дети(子供たち)

2. 人称代名詞(主格形)

ロシア語の人称代名詞は英語の I, you, he, she… にあたるものです。主格では次のように変化します。

人称単数複数
1人称я(私)мы(私たち)
2人称ты(君・親しい相手)вы(あなたがた / あなた〔敬称〕)
3人称он(彼)они(彼ら / 彼女たち / それら)
она(彼女)
оно(それ・中性)

補足

  • ты と вы の使い分けは重要です。тыは親しい相手に対して、выは複数形と同時に敬語としても使われます。
  • ониは人間に限らず、物や動物の複数にも使えます。

まとめ

  • 名詞の複数形は語尾によって規則的に変化しますが、不規則な単語もあるので注意が必要です。
  • 人称代名詞は英語と同じように主語としてよく使われますが、ロシア語では動詞の活用が主語を示すので、省略されることも多いです。

👉 名詞の複数形を覚えると、文章をより自然に組み立てられるようになり、代名詞を使いこなせば会話がぐっとスムーズになります。

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ロシア語独学②:文法カテゴリー

ロシア語を学ぶときに避けて通れないのが 数・性・格 という文法カテゴリーです。これらは単語の形を大きく左右し、正しい表現を作るための土台となります。ここではそれぞれを分かりやすく整理してみましょう。


1. 数(単数と複数)

ロシア語には 単数(единственное число) と 複数(множественное число) の区別があります。

  • 単数 … ひとつのものを表す(例:стол = 机)
  • 複数 … 複数のものを表す(例:столы = 机たち)

特徴的なのは、名詞だけでなく、形容詞や動詞も数によって形を変えるという点です。

  • 名詞:студент → студенты
  • 形容詞:новый стол → новые столы
  • 動詞(過去形):он писал → они писали

このように、文中の語が数に合わせて変化することで、文全体の統一感が保たれます。


2. 性(男性・女性・中性)

ロシア語の名詞には必ず 文法的性(род) があり、主に 男性・女性・中性 の3種類に分かれます。

  • 男性(мужской род):多くは語尾が子音で終わる(例:стол, друг)
  • 女性(женский род):語尾が -а / -я で終わる(例:книга, неделя)
  • 中性(средний род):語尾が -о / -е で終わる(例:окно, море)

また、形容詞や過去形の動詞も、この性に合わせて変化します。

  • Новый стол (新しい机, 男性)
  • Новая книга (新しい本, 女性)
  • Новое окно (新しい窓, 中性)

性は意味上の性別と必ずしも一致せず、文法的に決まっていることが多いので、名詞と一緒に性を覚えることが大切です。


3. 格(主格・対格・生格など)

ロシア語文法の最大の特徴といえば、格(падеж) です。
名詞・形容詞・代名詞などは、文中での役割によって形を変えます。

ロシア語には 6つの格 があります。

  1. 主格(именительный падеж) – 主語を表す
     例:Это книга.(これは本です)
  2. 生格(родительный падеж) – 所有や否定を表す
     例:Нет книги.(本がない)
  3. 与格(дательный падеж) – 受け手を表す
     例:Я дал книгу другу.(私は友達に本を渡した)
  4. 対格(винительный падеж) – 直接目的語を表す
     例:Я читаю книгу.(私は本を読んでいる)
  5. 造格(творительный падеж) – 手段・道具を表す
     例:Я пишу ручкой.(私はペンで書く)
  6. 前置格(предложный падеж) – 前置詞とともに場所や話題を表す
     例:Я думаю о книге.(私は本について考えている)

このように格変化によって文の意味が正確に伝わるため、語順の自由度が高いという特徴があります。


まとめ

  • :単数と複数があり、名詞だけでなく形容詞や動詞も変化する
  • :男性・女性・中性の3つがあり、名詞と一緒に覚えることが大切
  • :6種類あり、名詞や形容詞の語尾が変化して文中での役割を示す

ロシア語学習においてこれらの文法カテゴリーを理解することは、正確な文を組み立てる第一歩です。最初は複雑に見えても、慣れてくると「パズルのように組み合わせて意味を作る」楽しさが見えてきます。

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