ロシア語独学⑧:代名詞の格変化

ロシア語における代名詞は、名詞と同様に 格変化 します。ただし、代名詞は一般的な名詞とは異なる独自の変化形を持つものが多いため、学習者にとって特に覚えにくい部分です。本記事では、ロシア語の 人称代名詞・再帰代名詞・疑問代名詞 の格変化を整理します。


1. 人称代名詞の格変化

ロシア語の人称代名詞は以下の通りです。
(例:я「私」、ты「君」、он「彼」、она「彼女」、мы「私たち」、вы「あなた(たち)」、они「彼ら/彼女ら」)

人称主格属格与格対格造格前置格
1単яменямнеменямнойобо мне
2単тытебятебетебятобойо тебе
3単(男)онего (него)ему (нему)его (него)им (ним)о нём
3単(女)онаеё (неё)ей (ней)её (неё)ею (нею)о ней
3単(中)оноего (него)ему (нему)его (него)им (ним)о нём
1複мынаснамнаснамио нас
2複вывасвамвасвамио вас
3複ониих (них)им (ним)их (них)ими (ними)о них

※ 括弧内は前置詞の後で使われる形。


2. 再帰代名詞の格変化

ロシア語には「自分自身」を表す再帰代名詞 себя があります。主格は存在せず、以下の形を取ります。

属格себя
与格себе
対格себя
造格собой / собою
前置格о себе

3. 疑問代名詞の格変化

疑問代名詞には кто(誰) と что(何) があります。これらも格変化します。

(1) кто(誰)

主格кто
属格кого
与格кому
対格кого
造格кем
前置格о ком

(2) что(何)

主格что
属格чего
与格чему
対格что
造格чем
前置格о чём

まとめ

ロシア語の代名詞は、名詞とは異なる不規則な格変化を持ちます。特に 人称代名詞の短縮形・前置詞後の特殊形、再帰代名詞 себя に主格が存在しない点、そして疑問代名詞 кто / что の変化は重要なポイントです。

ロシア語独学⑥:名詞の格変化 ― 男性・中性・女性名詞ごとの基本

ロシア語の名詞は、**性(男性・女性・中性)と格(6種類)**によって形が変化します。格変化は文法の中核であり、主語・目的語・所有などを表すために欠かせません。ここでは、性別ごとに代表的な語を例に、格変化を一覧表で示します。


1. 男性名詞の格変化

男性名詞は、語尾が子音で終わるもの(硬変化)、-й、-ьで終わるもの(軟変化)があります。

例:стол(机、硬変化)

用法
主格(主語)誰が/何がстол
属格(所有・否定)誰の/何のстола
与格(間接目的語)誰にстолу
対格(直接目的語)誰を/何をстол
造格(手段・方法)誰で/何でстолом
前置格(場所・話題)誰について/何について(о) столе

例:учитель(先生、軟変化)

主格учитель
属格учителя
与格учителю
対格учителя
造格учителем
前置格(об) учителе

2. 中性名詞の格変化

中性名詞は語尾が -о、-е、-мя で終わります。変化は比較的単純です。

例:окно(窓)

主格окно
属格окна
与格окну
対格окно
造格окном
前置格(об) окне

例:море(海)

主格море
属格моря
与格морю
対格море
造格морем
前置格(о) море

3. 女性名詞の格変化

女性名詞は -а、-я、-ь で終わります。語尾の種類によって細かく変わります。

例:книга(本、-аで終わる)

主格книга
属格книги
与格книге
対格книгу
造格книгой / книгою
前置格(о) книге

例:дочь(娘、-ьで終わる)

主格дочь
属格дочери
与格дочери
対格дочь
造格дочерью
前置格(о) дочери

まとめ

  • 男性名詞:子音・-й・-ьで終わる。硬変化と軟変化に分かれる。
  • 中性名詞:-о、-е、-мяで終わる。規則的で覚えやすい。
  • 女性名詞:-а、-я、-ьで終わる。語尾によって変化が異なる。

次へ→ ロシア語独学⑦:格の用法