ロシア語独学④:名詞を修飾する品詞(主格限定)

ロシア語では名詞を修飾する語が多く存在します。ここでは主格形に限定して、所有代名詞・疑問所有代名詞・指示代名詞・定代名詞・形容詞に分けて整理します。いずれも修飾する名詞と同じ性・数・格に一致するのが基本ルールです。


1. 所有代名詞(Притяжательные местоимения)

所有を表す代名詞。名詞の性・数に一致。

  • мой, моя, моё, мои (私の)
  • твой, твоя, твоё, твои (君の)
  • наш, наша, наше, наши (私たちの)
  • ваш, ваша, ваше, ваши (あなたの/あなたたちの)
  • его, её, их (彼の、彼女の、彼らの) → 不変化

例:мой друг(私の友人)、моя книга(私の本)、наши дети(私たちの子供たち)


2. 疑問所有代名詞(Вопросительные притяжательные местоимения)

「誰の?」を表す。

  • чей, чья, чьё, чьи

例:Чей это дом?(これは誰の家ですか?)


3. 指示代名詞(Указательные местоимения)

対象を指し示す。

  • этот, эта, это, эти (この〜)
  • тот, та, то, те (あの〜)

例:эта женщина(この女性)、те книги(あの本たち)


4. 定代名詞(Определительные местоимения)

名詞を限定・強調する。

  • весь, вся, всё, все (全ての)
  • сам, сама, само, сами (〜自身)
  • самый, самая, самое, самые (最も〜)

例:весь мир(全世界)、сам человек(本人)、самая красивая девушка(最も美しい少女)


5. 形容詞(Прилагательные)

5-1. 長語尾と短語尾

ロシア語の形容詞には大きく分けて 長語尾形 と 短語尾形 があります。

  • 長語尾(полные формы)
    • 名詞を直接修飾する標準的な形。
    • 性・数・格に一致。
    • 例:новый дом(新しい家)、красивая девушка(美しい少女)
  • 短語尾(краткие формы)
    • 主語の状態を述語として表すときに使う。
    • 通常は述語用に限定され、修飾語としては使わない。
    • 例:дом новый(家は新しい)、девушка красива(少女は美しい)

5-2. 硬変化と軟変化

形容詞の長語尾形には、硬変化型 と 軟変化型 がある。語幹の末尾が硬子音か軟子音かによって決まる。

硬変化(твёрдое склонение)

  • 語幹が硬子音で終わる形容詞。
  • 主格語尾:
    • 男性:-ый / -ой
    • 女性:-ая
    • 中性:-ое
    • 複数:-ые

例:

  • новый дом(新しい家)
  • красивая девушка(美しい少女)
  • доброе слово(優しい言葉)
  • новые книги(新しい本たち)

軟変化(мягкое склонение)

  • 語幹が軟子音または й で終わる形容詞。
  • 主格語尾:
    • 男性:-ий
    • 女性:-яя
    • 中性:-ее
    • 複数:-ие

例:

  • синий карандаш(青い鉛筆)
  • синяя рубашка(青いシャツ)
  • синее море(青い海)
  • синие дома(青い家々)

まとめ

  • 所有代名詞:мой, твой, наш, ваш, его, её, их
  • 疑問所有代名詞:чей, чья, чьё, чьи
  • 指示代名詞:этот, тот
  • 定代名詞:весь, сам, самый
  • 形容詞
    • 長語尾形(名詞を修飾)と 短語尾形(述語として使用)
    • 硬変化型(-ый, -ая, -ое, -ые)と 軟変化型(-ий, -яя, -ее, -ие)

次へ→ ロシア語独学⑤:動詞の変化

ロシア語独学②:文法カテゴリー

ロシア語を学ぶときに避けて通れないのが 数・性・格 という文法カテゴリーです。これらは単語の形を大きく左右し、正しい表現を作るための土台となります。ここではそれぞれを分かりやすく整理してみましょう。


1. 数(単数と複数)

ロシア語には 単数(единственное число) と 複数(множественное число) の区別があります。

  • 単数 … ひとつのものを表す(例:стол = 机)
  • 複数 … 複数のものを表す(例:столы = 机たち)

特徴的なのは、名詞だけでなく、形容詞や動詞も数によって形を変えるという点です。

  • 名詞:студент → студенты
  • 形容詞:новый стол → новые столы
  • 動詞(過去形):он писал → они писали

このように、文中の語が数に合わせて変化することで、文全体の統一感が保たれます。


2. 性(男性・女性・中性)

ロシア語の名詞には必ず 文法的性(род) があり、主に 男性・女性・中性 の3種類に分かれます。

  • 男性(мужской род):多くは語尾が子音で終わる(例:стол, друг)
  • 女性(женский род):語尾が -а / -я で終わる(例:книга, неделя)
  • 中性(средний род):語尾が -о / -е で終わる(例:окно, море)

また、形容詞や過去形の動詞も、この性に合わせて変化します。

  • Новый стол (新しい机, 男性)
  • Новая книга (新しい本, 女性)
  • Новое окно (新しい窓, 中性)

性は意味上の性別と必ずしも一致せず、文法的に決まっていることが多いので、名詞と一緒に性を覚えることが大切です。


3. 格(主格・対格・生格など)

ロシア語文法の最大の特徴といえば、格(падеж) です。
名詞・形容詞・代名詞などは、文中での役割によって形を変えます。

ロシア語には 6つの格 があります。

  1. 主格(именительный падеж) – 主語を表す
     例:Это книга.(これは本です)
  2. 生格(родительный падеж) – 所有や否定を表す
     例:Нет книги.(本がない)
  3. 与格(дательный падеж) – 受け手を表す
     例:Я дал книгу другу.(私は友達に本を渡した)
  4. 対格(винительный падеж) – 直接目的語を表す
     例:Я читаю книгу.(私は本を読んでいる)
  5. 造格(творительный падеж) – 手段・道具を表す
     例:Я пишу ручкой.(私はペンで書く)
  6. 前置格(предложный падеж) – 前置詞とともに場所や話題を表す
     例:Я думаю о книге.(私は本について考えている)

このように格変化によって文の意味が正確に伝わるため、語順の自由度が高いという特徴があります。


まとめ

  • :単数と複数があり、名詞だけでなく形容詞や動詞も変化する
  • :男性・女性・中性の3つがあり、名詞と一緒に覚えることが大切
  • :6種類あり、名詞や形容詞の語尾が変化して文中での役割を示す

ロシア語学習においてこれらの文法カテゴリーを理解することは、正確な文を組み立てる第一歩です。最初は複雑に見えても、慣れてくると「パズルのように組み合わせて意味を作る」楽しさが見えてきます。

次へ→ ロシア語独学③:名詞複数形と人称代名詞(主格)

ロシア語独学①:キリル文字を順番に覚えよう

ロシア語のアルファベットは キリル文字と呼ばれ、全部で33文字あります。
ここではアルファベット順に紹介しながら、読み方や覚え方のコツを解説します。


キリル文字一覧(名称)

А а – 「アー」
Б б – 「ベー」
В в – 「ヴェー」
Г г – 「ゲー」
Д д – 「デー」
Е е – 「ィエー」
Ё ё – 「ヨー」
Ж ж – 「ジェー」
З з – 「ゼー」
И и – 「イー」
Й й – 「イークラトゥカェ」
К к – 「カー」
Л л – 「エル」
М м – 「エム」
Н н – 「エヌ」
О о – 「オー」
П п – 「ペー」
Р р – 「エル」
С с – 「エス」
Т т – 「テー」
У у – 「ウー」
Ф ф – 「エフ」
Х х – 「ハー」
Ц ц – 「ツェー」
Ч ч – 「チェー」
Ш ш – 「シャー」
Щ щ – 「シシャー」
Ъ ъ – 「トゥヴョルドゥイ・ズナーク」
Ы ы – 「ゥイ」
Ь ь – 「ミャーフキィー・ズナーク」
Э э – 「エー」
Ю ю – 「ユー」
Я я – 「ヤー」


文字ごとの解説

А а
  • 発音:日本語の「ア」と同じ
  • 例:мама (ママ) = お母さん
Б б
  • 発音:「バ」の子音
  • 英語の B に近い
  • 例:брат (ブラート) = 兄
В в
  • 発音:「ヴ」
  • 英語の V に近い
  • 例:вино (ヴィノ) = ワイン
Г г
  • 発音:「ガ」の子音
  • 英語の G
  • 例:год (ゴート) = 年
Д д
  • 発音:「ダ」の子音
  • 英語の D
  • 例:дом (ドーム) = 家
Е е
  • 発音:「ィエ」
  • 語頭では「ィエ」、それ以外は「エ」っぽくなることも
  • 例:еда (ィエダー) = 食べ物
Ё ё
  • 発音:「ィオ」をすばやく
  • 辞書では省略されることが多い
  • 例:ёлка (ヨールカ) = もみの木
Ж ж
  • 発音:「ジ」
  • 英語にはない音で「フランス語のj」に近い
  • 例:жизнь (ジーズニ) = 人生
З з
  • 発音:「ザ」の子音
  • 英語の Z
  • 例:зима (ズィマー) = 冬
И и
  • 発音:「イ」
  • 英語の ee
  • 例:мир (ミール) = 世界/平和
Й й
  • 発音:短い「イ」、英語の y に近い
  • 例:мой (モーイ) = 私の
К к
  • 発音:「カ」の子音
  • 英語の K
  • 例:кот (コート) = 猫
Л л
  • 発音:「ル」
  • 舌を歯の裏につけるL音
  • 例:луна (ルナー) = 月
М м
  • 発音:「マ」の子音
  • 英語の M
  • 例:мама (ママ) = お母さん
Н н
  • 発音:「ナ」の子音
  • 英語の N
  • 例:ночь (ノーチ) = 夜
О о
  • 発音:「オ」
  • 強勢(アクセント)があると「オ」、弱いと「ア」に近づく
  • 例:молоко (マラコー) = 牛乳
П п
  • 発音:「パ」の子音
  • 英語の P
  • 例:папа (パパ) = お父さん
Р р
  • 発音:「ル(巻き舌)」
  • イタリア語やスペイン語のRに似ている
  • 例:река (リカー) = 川
С с
  • 発音:「サ」の子音
  • 英語の S
  • 例:соль (ソーリ) = 塩
Т т
  • 発音:「タ」の子音
  • 英語の T
  • 例:тут (トゥート) = ここ
У у
  • 発音:「ウ」
  • 英語の oo
  • 例:ум (ウーム) = 知恵
Ф ф
  • 発音:「フ」
  • 英語の F
  • 例:фон (フォン) = 背景
Х х
  • 発音:「ハ」より強く、喉の奥で出す音(ドイツ語のBachのch)
  • 例:хлеб (フリェープ) = パン
Ц ц
  • 発音:「ツ」の子音
  • 例:царь (ツァーリ) = 皇帝
Ч ч
  • 発音:「チ」の子音
  • 例:чай (チャイ) = お茶
Ш ш
  • 発音:「シ」の子音
  • 舌を後ろに引いて発音
  • 例:школа (シコーラ) = 学校
Щ щ
  • 発音:「シィ」
  • 例:щи (シィー) = キャベツスープ
Ъ ъ(硬音記号)
  • 発音しない。直前の子音を強くして次の母音をはっきり読む。
  • 例:подъезд (パドイェースト) = 入口
Ы ы
  • 発音:「ウ」と「イ」の中間音
  • 例:сырый (スィルィー) = 生の
Ь ь(軟音記号)
  • 発音しない。直前の子音をやわらかくする。
  • 例:мать (マーチ) = 母
Э э
  • 発音:「エ」
  • 例:это (エータ) = これは
Ю ю
  • 発音:「ユ」
  • 例:Юрий (ユーリー) = ユーリー
Я я
  • 発音:「ヤ」
  • 例:я (ヤ) = 私

まとめ

  • ロシア語のアルファベットは 33文字
  • 形が似ているけど発音が違う文字に注意(例:Н=「ン」、Р=「ル」)
  • 記号(Ъ Ь)は発音しないが、読み方を変える重要な役割を持つ

まずは毎日5文字ずつ書いて声に出す練習から始めれば、1週間で全部マスターできます!

次へ→ ロシア語独学②:文法カテゴリー